ライオンのおやつ
Twitterの企画で
#丸善ジュンク堂に住んでみる2020夏エア開催
というタグを、開催当日に見つけました。
元々は、実際の店舗に泊まれる(夜通しその店舗の本が読める)
というイベントを毎年開催していたそうです。
今はこの状況では難しいため
ではせめてその企画をやっている感覚で、
それぞれの家でおやつをおともに本を読もう、という趣旨のもの。
そういえば実家にいた時は
1人の部屋がなかったので
ひとり静かに、コーヒー片手に本を読むことって
出来なかったんだよなと思い出しまして
気の向くまま、参加することにしました。
随分と長い間、読書からはなれていたので
集中して読めるのかなあと不安に思う気持ちも少しありましたが
読み始めたら問題なかったし
コーヒーと少しのおやつをお供に読書だなんて
なんだかこれぞ大人の夜更かし、みたいな感じで
ちょっと嬉しい気分でした。
以下、ネタバレを含みます。
自己責任でお願いしますね。
ライオンのおやつ。
この本は
余命宣告をされた主人公、雫が
自然豊かなホスピスで最期を過ごすことに決めたところから
物語が始まります。
主人公の目線で話が進んでいくのだけれど
途中から、"あ、さっきのあそこは夢の中だったのか"
という部分が増えてきたり
主人公目線では描かれなかった部分が
違う人の目線になった時に改めて描かれていたり
小説ならではの楽しさってこれなのかな、と思いながら読みました。
漫画やドラマは、回想シーン、夢の中、
これは今このキャラが思っていること、というふうに
だいたいちゃんと切り分けが行われるけれど
小説はそうでもない。
本の世界からは随分と離れていたから、
余計に新鮮だったのかもしれません。
あらすじを見て推測出来る通り
雫は最後、亡くなってしまいます。
そういう意味では楽しい小説ではないのだけれど
でもところどころふふっと笑えたり、微笑ましかったり、
ホスピスに入ったことで出会った人たちとの関係や絆、縁、
そういった暖かいものにも、読んでいて触れることができて
ただかなしくて切ないだけの物語ではなかったし
読んでよかった、買ってよかった、
そう思えた作品でした。
病気に対する苛立ち(回想)や
死への恐怖、まだ生きていたいという葛藤、
そういった部分は正直本当にリアルで
特に
「抗癌剤治療のために切り詰めて生活して、辛い治療にも耐えたのに
結果的には悪化してしまった」
「あんなに頑張ったのに、結局自分で自分の身体を痛めつけただけだった」
その現実への苛立ち、恐怖、自責の部分
「死期を目前に控えて思った、"まだここで生きていたいなあ"という心からの声」
あたりは
今思い返すだけでも涙が出てきます。
死を受け入れるって、そう簡単なことじゃない。
死期を間近に悟った身でも、まだ生きていたいと思っている芯の部分がある。
わかったふりをしていただけなんだ、と。
そして
父もそうだったのかな、
見せなかったけどきっとそうだよな、、
父は
治療で少しよくなったと思っていたのに
別の弊害(副作用)が出て
そのせいで治療をストップするしかなくて、
そのまま悪くなってしまった形なので
悔しかっただろうし、
ひとりでこんなに頑張ったのになんで、って思っただろうし
気持ちの行き場はなかっただろうなとか
どんどんできないことが増えて、どんな気持ちだったんだろう、
夢と現実と、この作品のように父も混ざった時を生きていたのかなとか
もし私がこうなったら、やっぱりきっと同じように思うだろうなとか…
いろいろな感情が駆け巡って止まりません。
それから
本当にラスト、雫が亡くなった後に
雫の父親が
そうそうあの子はこれが好きでね、と
にこにこしながら語るシーンがあるのですが
その部分は、記憶の中の私の父の笑顔とリンクしてしまって
しばらく涙が止まりませんでした。
正直、父のことがあったから
こういった作品に惹かれたり、興味を持ったりするようになったのだろうと
私は思っています。
君の膵臓を食べたい、もそうでした。
重ねて、涙を流すことで
わたしの中の何かを昇華したいのかもしれません。
そういった意味でも、この本を読んで
死に対して、病気に対して、
自分や、周りのひとに対して
そして今を生きること、
色々なことを考えました。
人生の最後に食べたいおやつ、についても。
この物語の舞台、ホスピスの特徴のひとつが
日曜日のおやつの時間で
それは、ひとり一回、人生の最後に食べたいおやつをリクエストする、というもの。
雫を含めて、話に出てくるおやつの
ほとんどの思い出が家族とのもので
私にもそういう、最後に食べたい
思い出の詰まったおかしってあるかなと考えると
残念ながら出てこないんです。
最後に食べたいもの、何か一つでも言えるように出来たらいいなって
そんな風に思いました。
雫は
病院のような規則に縛られないこと、
ふかふかの布団でゆっくり寝られること、
ご飯が美味しいこと、
おやつの時間を楽しみにすること、
全てに"しあわせ"を感じ、それを言葉にしていて
私はただ素直に、素敵だなと思いました。
私も雫みたいに、今を素直に生きられるのでしょうか。
物語の中で出てきた言葉。
「思いっきり不幸を吸い込んで、吐く息を感謝に変えれば、あなたの人生はやがて光り輝くことでしょう」
確か、同じホスピスに入っている
元シスターという登場人物の言葉だったと思います。
なかなかここまでできないけれど
雫は最後、ホスピスで過ごす中で
素直に幸せと言えたり、これまでのことや
出会った人に感謝したりできるようになっていったので
わたしもそうなれたらいいな。
長々と読んでくださった方、いましたらありがとうございます。
とてもいい本でした。
0コメント